ギターのレシピの山脇オサムです。
いよいよスーパークロスのレース直前。
横一列にならんでスタートするので、その位置を決めるくじ引きが行われます。
というのも、スーパークロスのジュニアクラスはエキシビジョンなので“たったの3周”しか走れないんです。
なのでスタートで出遅れたら挽回はもはや不可能。どれだけ良いスタートが切れるかが最重要ポイントなんです。
そして僕の順番。
引いた番号は…
ゾゾゾゾォ~。
鳥肌立ちました。
25台並ぶので順番的にあまり良い数字ではないんですけど、そこではなくてこの「13」という数字、モトクロス界ではむちゃくちゃ嫌われる数字なんです。
西洋では13日の金曜日とかで知られてますよね。
レースではゼッケンナンバーは「1」「2」とかなるべく小さいほうが良いんですけど、「13を付けるくらいなら14で良い」と誰も付けない数字なんです。
ちなみにこの暗黙のルールを破ったのがモトクロス界のレジェンド「リック・ジョンソン」です。
「なんか嫌な感じだな…」と不安になりつつ順番を待って、13番が呼ばれます。
空いてるグリッドを探すんですけど、真ん中あたりの良いところはもちろん全部埋まってる。
コーナーに対して外側はいっぱい空いてるんですけど、ここじゃ勝てない。
じゃあインは…と見ると、なんとなんと「一番イン側」が開いてるんです。
(うっそ~ん)
この「一番イン側」というのは一か八かの場所なんです。
上手く行けばインから抜けてホールショット。でも少しでも遅れると外側から被せられて目も当てられない、そんな場所なんですね。
普段のレースでは絶対にとらない場所です。
しかもくじ番は「13」。
いろんな状況が重なって一瞬気絶しそうになりましたけど、迷いはありませんでした。
いよいよエンジンをかけてカウントダウンがはじまります。
4万人の観客の声なんて1mmも聞こえません。
60秒前。
30秒前。
10秒前。
スタートーーー!!!
インからギリッギリまで攻める!
誰もアクセル緩めない!(マジで!)
ブレーキング勝負!
もう完全にリアルチキンレース!
3速から2速へ落とし落ち着いてインを切り抜ける!(JMバイルのように!)
そして第一コーナーを・・・3位で抜けたんです。
前には2台。
1位のライダーはすでに離れてたので、一瞬で作戦を考えます。
「1周目に一人抜いて順位は2位でOK。2周目でぜったいに3連を飛ぶ」
作戦通り1周目で前のライダーを抜きます。
3周勝負なので周回遅れもいない。
さぁ準備は整った。
あとはやるだけ。
いよいよ2周目。
3連ジャンプは第2コーナーを抜けたあとにあります。
ライン取りはイメージトレーニングで完璧。
一番アウトからアクセル全開。
シフトも3速のまま。(ガイ・クーパーのように!)
バイクもぶれない。
最高のコーナリング。
そしてぶつけ本番の3連ジャンプ。
思いっきり飛び出したその瞬間、集中してて1mmも聞こえなかった4万人の観客の大歓声がヘルメットを通り越して耳に入ってきたんです。
文字にすると温泉マークとか星とか出るような訳のわからない歓声。
すんごかったです。(一生忘れられない)
その歓声を聞きながら3つめのジャンプ台に着地成功。
この年、ジュニアクラスで3連を飛んだ唯一のライダーになりました。
(やった…飛んだった…俺いま西日本で一番カッコええ…)
その3連ジャンプではないですけどスーパークロスの写真。3連はもっとでっかいです。(写真が残ってないのがほんと心残り!)
大きな目標を達成した山脇少年ボーイ。
名前は知れ渡り、僕と練習をするために地元鳥取のコースに県外からライダーが集まるようになります。
しかし、僕の心には「引退」という言葉が見え隠れしていたのです。
山脇のレシピ、次回へ続く。。。