札幌のエフェクターボード製作屋、ヘルニアエフェクトボードデザイン根尾です。
最近の札幌の夜はかなり寒いので冬用のシュラフで寝ています。シュラフ、と口に出すとなんかかっこいい響きに聞こえますが、ようは寝袋ですね。家で寝袋ってどうなの。
さて、私的には2022年最終週のメールマガジンとなりました。今年も一年間、読んでいただき、本当にありがとうございました。
今回は年内最後に、とあたためておりました内容になります。だいぶ長くなりますが、私にとって始めた頃のひとつの目標を達成できた、これまでの製作方法の多くを詰め込んで挑戦した、そんなエフェクターボード製作との戦いの記事となります。
ご興味ある方はぜひ最後まで読んでいただけますと幸いです。
私は19歳から36歳くらいまで、楽器店のスタッフをしておりました。
プロの間でもラックエフェクターが少なくなっていき、コンパクトでエフェクターボードを組んでいる記事が目立つようになってきた頃、これはかっこいい、こんなのを作りたい、そんな風に漠然と考えていました。
そして地元のバンドマンのお話を聞いていくうちに時間短縮、便利な環境をつくる役に立ちたい、と始めたのがエフェクターボード製作の始まりでした。
当然、最初からすんなりと組めたわけではなく、やっていくうちに問題がでてきてはその都度、解決方法を考えてきました。
たとえば
・ボードにベタ置きだと挿せないプラグがある
・プラグの形状によってDCケーブルに干渉するものもある
・ケーブルの取り回しには地味にかなりのスペースを必要とする
・固定方法によっては踏み心地に影響する
・キレイにすることで消せるノイズがある
など。
これが段違いのかさ上げであったり、飛び出しの少ないプラグの使用であったり、細身のパッチケーブルの登場でよりタイトに配置できるようになったり、マジックテープの貼り方を考えたりなど、自分なりの解決策が生まれてきました。
大きなチャンスがきても自分にその準備が充分にできていないとものにできない、ということが自分自身これまでありました。
ただ、エフェクターボード製作に関しては準備ができている、そんな今です。
今年の10月、ギタリスト 高橋 克 様のエフェクターボードを製作させていただきました。
きっかけは長年、メールのやりとりをさせていただいている大阪のお客様から「ジャケットのデザインを担当したので送ります」といただいた一枚のCDです。
キャンプが好きでそこそこ遠くに行くわけですが、札幌から函館手前の北斗市、往復で8時間前後ですかね。他にも富良野、支笏湖、美瑛など。
今年行ったキャンプ場への移動時は常にこのCD、オールリピートでした。CDと言っても実際はiPhoneですが。まぁそれはいいとして。
不思議と飽きない、景色にハマるメロディが心地よくていつしかキャンプに行く時のテーマソングになっていました。無人島に持っていくならこの5枚、に入るような。
と、いうようなことを大阪のお客様へ感想としてお伝えしていたところ、返信がありましたよ、とワンクッションおいて急速に、急激にハマったCDのご本人様から直接コメントをいただける、というつながりに震え上がったものです。
これが春先の出来事。
そんなこんなで時は過ぎ、10月。まさかのボード製作のご依頼をいただきました。突然ですが、本題の完成したボードがこちらです。(ARMOR / PS-1C)
・One Control / JUNCTION BOX (右)
↓ (30cm)
・FOEHN / FPT-06 (チューナー)
↓ (24cm)
・ERNIEBALL / VOLUME PEDAL (ボリュームペダル)
↓ (38cm)
・tc electronic / SUSTAIN+ (コンプレッサー)
↓ (40cm)
・Ibanez / WD7 WEEPING Demon (ワウ)
↓ (38cm)
・BOSS / OC-2 Octave (オクターバー)
↓ (11cm)
・xotic effects / Soul Driven (オーバードライブ)
↓ (13cm)
・electro-harmonix / Soul Food (オーバードライブ)
↓ (38cm)
・LINE6 / M9 (マルチエフェクター)
↓ (41cm)
・Ibanez / DML10
↓(83cm)
・One Control / JUNCTION BOX (左)
↓
・アンプへ
直列でボード内のパッチケーブルの長さ合計は 356cm。スイッチャーがある場合は7m近くになりますので70cm幅のボードとしてはそこそこ短めの数値です。
直列での音質劣化を少しでも避けるためにボリュームペダルのチューナーアウトを使用したいところでしたが、実際に音出しをして確認するとハイが吸われてしまうと感じたため、チューナーアウトは使用せず。
ボリュームペダルでミュートさせていてもチューナーが使えるように手前につないでいます。便利な仕様も実際に使用した時の比較、音出し確認は必須です。
チューナーは踏みやすい位置でかさ上げして配置しています。
ワウペダルの不思議な横の出っ張りもこのためのアレなのか?とちょうどハマりました。いや、ハメました。
すべて収まっても使い勝手が悪いのでは意味がありません。使用頻度の高いペダルに関してはなおさらです。
LINE6 / M9はアルモアでかさ上げできる高さギリギリまで調整し、手前との段差を設けています。マジックテープ分でもわずかな厚みが出ますのでそこも含めてかさ上げしています。
ここの罠として、説明書やネットに出ている寸法には最大の高さや幅が記載されていないこともしばしば。数値だけでレイアウト図描いている時と現物で寸法が合わないこともあるので注意が必要です。実機採寸メモが一番。ヘルニアデータバンクです。
Ibanez / DML10はスペース的にL字のプラグが収まらず、手前をかさ上げして後段の操作性を犠牲にするわけにはいきませんのでショートのストレートで接続。
入出力、電源端子がすべて上部、かつ横幅の狭いエフェクターのスペースをつくるのは場合によってはなかなか大変です。
パワーサプライは VOODOOLAB / PEDAL POWER 2です。
ギリギリサイズのため、LINE6 / M9のACアダプターはその都度背面のコンセント口に接続、セッティング時にボードに踏まれにくく、ひっかかりにくい、抜き差しに不便のない程度の長さで自由になるように調整、固定しています。
エフェクター類のかさ上げは基本的に硬質スポンジを使用していますが、パワーサプライは木材です。ここは軽量化の逆をいく、ここだけは「なるべく軽量で」のご要望をスルーして重量のある山桜で。
掲載画像のどの角度からも見えないのがアレですが、黒く塗ってどっしりとした土台となってもらっています。
電源はボードの中で激しく重要です。お金かけるべきは電源とボード、この2つで永く使えるかどうかが決まると思います。
地元、札幌にいながらいつかプロミュージシャンのボードを製作したい、というのは長年の目標でした。
レコーディングでもボードでそのまま使えるクオリティを目指して続けてきたことははたしてプロギタリストの耳に通用するのか、というのもずっと知りたかったことでした。
こうした目標もいざ受注した段階でデッド・オア・アライブな挑戦となりましたが、どんなボードも毎回これまでの経験をすべて投入し、仕上げるのみですので本当に良い経験となりました。今回はアライブです。
高橋 克 様、そして大きなきっかけを下さった伊藤 良哉 様、本当にありがとうございました!
最後に、高橋 克 様よりコメントをいただけましたので合わせて掲載させていただきます。
最初に驚いたのは「ノイズ」の無さ、少ないってレベルでは無く、無い事に驚きました。
仕事柄、録音などの仕事にはノイズは本当に困りもので、如何にしてノイズを無くすかに苦労していました。
ここまで出来る事に感心、感動しています。想像以上の出来栄えと感じます。
ありがとう。
今後ともヨロシクお願いします。
ありがとう。
いつか会いに行きます。(笑)
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いいたします。
よいお年をお迎えください。