札幌のエフェクターボード製作屋、ヘルニアエフェクトボードデザイン根尾です。
諸々の予定が終わって気が抜けたのか、風邪がなかなか治らない 45 歳の年末です。
はい、というわけで 2024 年最後のメルマガになります。
今年もエフェクターボード製作や入換のご依頼、リペア、調整、改造のご依頼、アンプ修理の仲介、質問、ご相談、ボード診断、お問い合わせくださった方、みなさまに感謝しております。本当にありがとうございました。
一年の締めくくりに何を書こうかなーとじわじわ考えていたのですが、度々、お問い合わせに合わせて聞かれることのあるギターのお話を書きたいと思います。
Q : 根尾さんはどんなの使ってるんですか?
A : スマグラーテレです。
ってお話。
だいぶ異色な内容ですのでお時間があればコラム的に読んでいただければ幸いです。
通称、スマグラーテレは Fender の 1967 年の一時期のテレキャスターです。
色んな説のあるモノで本当のところはどうなんだろう?って思う部分もありますが、“smuggler” と調べると密輸業者、ブツの運び屋、密入国斡旋業者、など比較的穏やかではないうすら怪しいワードが並んで出てきます。
コレなんでかと言いますと、ピックガードの下が派手にくり抜かれているんです。
テレキャスターはネジを外すだけでピックガードを簡単に取り外せますので、その下に空洞を作ると何かを隠す、取り出すには面積的にも最適なギター、と言えなくもなく。
中学生の頃からことあるごとに映画『イージーライダー』を観ているような私は当時の文化、カルチャーに興味津々で、バイクが好き、腕時計をしない、髪が長いってのもこの映画の影響です。
映画の中でフィルスペクターと取引する時、例のモノはバイクのバッテリーの中です。
一見怪しくないモノに隠していたりする 1969 年の映画。
映画に出てくるロールスロイスはフィルスペクターの私物、という点もおもしろく、言わずもがなウォールオブサウンド、音楽に関係する人でもあります。
他にもこの時代近辺のレザージャケットで EAST WEST MUSICAL INSTRUMENTS というメーカーがあります。
元々楽器製作を行なっていた会社でその屋号のまま、衣装製作、カスタム色の極めて強い革ジャンを作っていたところですが、こちら、変なところにポケットがついているんです。
隠しポケットと呼ぶにはちょっと隠し過ぎな、襟を立てた裏にジッパーがある、スタッシュポケット。復刻モノ、レプリカがありますがそこも再現されています。
余談ですが、NIKE からグレイトフルデッドのスニーカーが出たことがありましたがそちらもベロにスタッシュポケットがあったりと、グレイトフルデッドと言えばそういうイメージも強く、当時のヒッピーはそういうところに隠し持っていたっていうイメージ、再現なのかなぁと。
バッテリーを売ると見せかけて、革ジャンを売ると見せかけて、そしてギターを売ると見せかけて、本当はそこに隠されたアレの取引に使われていたのではないか?
同年代のモノを合わせてみていくとそのような推測ができる、真実は謎ですが全く別のストーリーも想像できるギターなわけですね。
資料本、テレキャスター・オーソリティ(2011年発売)には掲載されていてもスマグラーとは書かれていないので後付けな気もしなくもないのですが。
説として翌年発表となる 1968 年のシンラインのプロトタイプ、それを間違って出荷しちゃった、また、軽量で良質なアッシュがなくどれも重く、軽量化のためにくり抜いて出荷してみた、が有力ですが、おそらく後者じゃないかと思っています。くり抜かれてても鬼重いので。
そして時は流れて 2015 年、どういうわけかこの仕様で Fender Custom Shop から“ 1967 Smugglers Telecaster “ として限定発売されます。震えました。
カスタムショップ製の特徴のひとつにキャビティのザグリが狭い、という点があります。
当時の掘りの再現、レギュラーよりも密な構造で木材の質量を増やしている、と思っておりますが、楽器店勤務時代、先輩が買ったカスタムショップのストラトのピックガードを外していた時に配線ズラしたら戻せなくなりそう、と言っていたくらいにタイトでした。
そんなカスタムショップ製のイメージがある中、ガッポリ中くり抜くってどうかしてんな、と。
良い時代の良い仕様はほとんど復刻してきたから、なんかやってないの…あ、アレやっとくか、という悪ノリにも思えますが Fender の粋にも思える。
まったくもって売れ線ではない、ネーミングもネーミングな恐ろしく珍妙なモデルに思えて仕方なかったんですよね。と同時にコレはなんとしても私欲しい、となりまして。
好きなモノ(ギター)が好きな時代の文化と関係してるっぽい、そしてまず人とかぶらないであろう、私はそういうモノに惹かれる傾向にあります。
楽器店でもよほどコレを販売したい、という特殊な情熱がなければ上司からの仕入却下間違いなしの枠だとも思います。
そんなこんなの珍仕様ギター、2018 年頃にはブラック、レイクプラシッドブルーでしたが新品特価品として少数ですが出ておりました。
ホワイトのみと思っていたのにまさかのカラーバリエーションもあったのか!?と思ったものです。
ピックガードの下が空洞なので指が当たるとパコパコうるさい、ハウりやすい、アンプを選ぶ、もちろん良い点もありますが、それはこの中で見るから良い点に思えなくもなく。
カスタムショップ製の後に 1967 年製に触れることになりますが音の傾向はひじょうに似ていてその点カスタムショップ凄いな、とあらためて思いました。
大きく異なるのは重量、カスタムショップ製はアッシュでも超激軽。
パッと見はスタンダードなテレキャスターなのに実は変、音づくりにも手のかかる特性、あるのかないのかわからない都市伝説的な側面、やはりこういう他とは違うモノがひじょうに好きな性格なもので偏愛しております。
そんななのでエフェクターボード製作の打ち合わせ時も複数のレイアウト作成やそれが大幅な変更になったとしてもまったく苦がなく、ここをこうしたい、ああしたいというご要望は多いほどに燃えるんですよね。
ご相談、ご依頼をいただいた時は完璧にご納得いただけないと意味がない、と考えておりますので、何か困ったことがありましたら 2025 年もお気軽にご相談ください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
いつも読んでます、参考になりますというご感想メールも大変励みになっております。
本当にありがとうございました。今年一年、本当にお世話になりました。
良いお年をお迎えください。
★ 2022年に製作させていただきましたギタリスト高橋 克 様のエフェクターボードを 「こちら祇園二丁目濱田製作所 様」にてご紹介いただきました。ありがとうございます。HELL NEAR EFFECT BOARD DESIGN 製のエフェクターボードの音がご本人様の演奏で聴けます。
★ 過去製作は Instagram に載せていますのでチェックしていただけると嬉しいです。
→Instagramはこちら
『全都道府県に製作実績を』を今後の目標にしておりますので、日本全国よりご相談、製作のご依頼、心よりお待ちしております。フォローしていただけると大変嬉しいです。よろしくお願いいたします。