領収書をお願いする時は「ちょっと長いです」と前置きが必要な悩める名前、ヘルニアエフェクトボードデザイン、根尾です。
前回は、バッファードバイパスのエフェクターを通過するとノイズの影響を受けにくいローインピーダンスに変わりますが、バッファーくさい音になってしまうモノもある。
トゥルーバイパスのエフェクターを通過すると、原音には忠実ですがノイズの影響を受けやすいハイインピーダンスのままの取り回しになる、というお話でした。
バッファードバイパスタイプのエフェクターを使っていて、「音はすごい好きなんだけど、OFF時のバイパス音がイヤ」という場合には「スイッチャーを導入する」という方法があります。
■図1
初めての方にも伝わるように「スイッチャーとはなんぞや?」というところからいきます。ちょっと長いです。
世の中の多くのスイッチャーはだいたい横に細長い格好をしています。
エフェクトボードの中で横に細長いのは電源部分のパワーサプライかスイッチャーですので、ACアダプターの類がささってなく、パッチケーブルがやたらとささってて横に細長いのがあれば、おそらくそれがスイッチャーです。
手前にあればほぼ確実です。
このスイッチャー、どういう役割かと言いますと、接続したエフェクターの ON/OFF 操作ができる、というものです。
スイッチャーに接続する部分を「ループ」といい、5個または8個のループを備えたモデルが定番になっています。
エフェクターの ON/OFF はスイッチャー側で操作しますので、ループ内のエフェクターは基本的に常時 ON です。そのため、電池での使用はあまりおすすめできません。
スイッチャー導入の場合はパワーサプライとセットと考えるのが良いと思います。
スイッチャーだけの操作の場合は「ループ数=エフェクターをつなげる数」になりますが、ループ内でエフェクター本体の切替えもやる場合は2〜3つ繋いで、使うエフェクターをON、使わないエフェクターをOFFにします。
そしてスイッチャー側をON、ということもできます。図にするとこんな感じですね。
■図2
スイッチャーにも、エフェクターON/OFFのシンプルなモノから、ループの組み合わせを記憶させてひと踏みで複数の切替えをしてくれるプログラマブルスイッチャー。
さらには、MIDI対応エフェクターのプリセットまで同時に呼び出しができたりと、場面に合わせてセレクトできる世界になってます。
と、スイッチャーについて簡単に説明しましたが、ここからが今回の本題です。
スイッチャーにも「トゥルーバイパス」と「バッファードバイパス」、どちらも選べるモノもありますが、今回はあくまで「バッファードバイパスエフェクターのOFF時のバッファーくささをなくす」というテーマなので、スイッチャー自体はトゥルーバイパス仕様とします。
まずスイッチャーにバッファードタイプのエフェクターを繋ぎます。
■図1の繋ぎ方
スイッチャー内のエフェクターは常にONなので、この時点でOFF時のバッファードバイパス通過を防ぐことができるんです。
エフェクターのON/OFFはスイッチャーでやるので、信号の流れは「トゥルーバイパスのスイッチャー⇒アンプ」となります。
これで、エフェクターをOFFにした時のバッファーの影響を受けなくなり、実質トゥルーバイパス化が完成するわけです。
この実質トゥルーバイパス化はヴィンテージエフェクターにも効果的で、ON/OFF の切替えをエフェクター本体でする回数が減るためスイッチの寿命も延びます。
デメリットは、ひとつのエフェクターにつき2本のパッチケーブルが必要になる点でしょうか。
図の1ヶ所、矢印が出てないところは TUNER OUT。その名のとおりチューナーを接続します。
多くのスイッチャーは MUTE (ミュート)スイッチを装備しています。
ここを ON にすると音が出ない状態でチューニングできるようになります。手前で操作できるのでとても便利ですね。
3ループスイッチャー、少ないと言われがちですがかなり優秀だと思います。
単純に手前で操作したい場合のコントロール重視用、直列で並べるとどうしてもノイズがのりやすい歪みだけをまとめる用、バンド掛け持ちベーシストの3種のプリアンプ切替え用、など、多彩にコンパクトに使える逸品です!