ヘルニアエフェクトボードデザイン根尾です。
寒いですね。こう寒いと乾燥でたまにあかぎれが。大人になってだいぶマシになりましたが、小さい頃は粘土の時間が拷問、みかんがむけない、小さいことにずいぶん苦しめられました。
ハンドクリームは小さい頃のいい記憶がないので今も苦手です。あのヌラッとするのが嫌なのと、右手の指先が柔らかくなるのも嫌で。濡れると割れるんで外では素手にならないように気をつけています。
車の雪下ろし、雪かき、雪遊び、何するにもテムレス・ウィンター最強。何かと気をつける、状況に応じて対応するってな感じです。
はてさて、前回は弦交換時のフレット磨きについて書きましたがもうひとつ同時に行っていることに指板ケアがあります。オイル入れ、ですね。
で、オイル入れの具体的な内容ではなく、関連したよくいただくご質問を体験談に基づきお話ししたいと思います。
今回はとくに写真が必要な内容ではありませんので、うちのメンテナンスで使っている液体系の様子を載せてみます。
秋から冬にかけて弦交換や調整でお越しいただいている時に楽器の保管について、よく聞かれる質問があります。
Q : 冬は加湿器使った方がいいですか?
A : 湿度どれくらいですか?
はい、質問に質問返しでアレなんですが、けっこう多くの方がわかりません、湿度計ないです、とお答えいただくことが多いんですよね。
まずは現状の環境、温度と湿度を可視化するのをおすすめしています。
極力温度変化が少なくて湿度は50〜60%の間あたり、これくらいを常時キープしてあげるとネックは反りにくく不具合も起きにくいです。
もっとも怖いのが「割れる」です。
乾燥した状態が長時間続くと木でできている製品ゆえに最悪割れます。アコースティックギター、とくに単板はトップが割れます。指板、とくにエボニー指板はさりげなくパックリ割れます。
トップ割れは湿度管理、指板はオイル入れが重要になります。
さらには木が縮むのでもろもろ痩せます。わかりやすいところだとボディの「目痩せ」、塗装が一部なんか変?ってなったり、木目の筋が部分的に浮いて見えてきたり。
メーカー特価品になったりするモノはこの「目痩せ」が理由だったりすることもけっこうありました。
ネックが痩せるとフレットがサイドから飛び出てきてしまう「バリ」が出ます。これは普通に痛いので演奏に支障が出ますし、ひどい時はケガするくらいです。
そうなってしまうとダイヤモンドヤスリでバリ取りです。
ネックの状態はいろいろな要因がありますが、乾燥環境は順反りする傾向にあります。対策として、湿度30%以下になることがある場合は加湿器があってもいいと思います。
楽器店時代、加湿器だけでは追いつかなく、朝一水張ったバケツを置いておくだけでも違いました。冬は暖房が入るので乾燥がひどいわけです。そのバケツの水、閉店頃には半分以下に減っているという恐怖…。
家庭では楽器のある部屋に洗濯物を干す、とかでもけっこう変わります。
湿度が高いとペグやフレット、ブリッジなど金属パーツがヤラレていきます。くすんでいく、輝きがなくなっていく、最悪はサビる、です。
当然、弦もサビやすくなりますので、フレット含め弾き心地も悪化しやすくなってしまいます。
ネックはこちらもいろいろ要因アリですが、逆反りする傾向にあります。
しばらくぶりに弾いた時、ちょっとチューニングが高くなってるのは湿度が高めのサインです。
対策は除湿機なんでしょうが、僕は使ったことがないので謎家電のままです。いたるところに3パックセットの湿気取りが売ってますので私はそれで対応しています。個数と位置と湿度チェックですね。
よく言われることですが、毎日ちょっとでも弾く、これが最大のメンテナンスだと思います、ちょっとした変化も対処しやすい、早期発見にもなるわけですね。
ということで温度変化や湿度状況を知ることは楽器のある環境ではかなり重要です。
お持ちいただく楽器の状態で環境はイメージできるので乾燥ぎみの場合は指板のオイル量を調整したり、必要なければ入れなかったり、状態に合わせてのケアが大事かと思います。
この湿度の状態、逆手に取ると環境で調整する、ということもできます。調整で仕上げるよりもちろん時間はかかりますが。
多少順反りしていてもトラスロッドはあんまりいじらないでほしい、そんなお客様には多少湿度の高い環境においてみてください、みたいな。
私はと言うと気温変化を避けるために楽器のある部屋はNO暖房です。
気温変化がほぼない分、ネックは年中安定していますが、ヒトである私には冬は寒い…。
秋冬はハンダ作業時のみ卓上で電気ストーブ、目が焼けそうになる。極端。
本当に冬の乾燥は恐怖でしかないんです。アコはとくに。
実際に起こってしまったこととして、バキッ!と音がしたと思ったらアコギがセンターから割れてたり、破滅的な音がしたと思ったらアコギのブリッジが剥がれて吹っ飛んだ音だったり。極端な例ですがそんなゾッとすることが実際ありました。
アコギには楽器用の保湿剤、ダンピットが効果的でした。
バケツに水くんで緑のニョロっとしたホースをひたして絞ってキズがつかないように慎重にサウンドホールに入れる、というものですね。楽器店入りたての10代の頃はそういう形状で。
楽器の割れは防げるが私の手は割れていったという思い出がありますね…(遠い目)。
そんなこんなで春は常に待ち遠しいもんです。