「反対の賛成なのだ」
考えれば考えるほど深い言葉です。こにゃにゃちわ、リペアショップ小岩funk河田 健太です。
エレクトリックギターの歴史で最初に作られたのはシングルコイルのピックアップです。
音は非常に素直でクセがないのが特徴ですが、ノイズが多いのが難点と言えます。
そこでギブソン社が画期的なピックアップを開発します。「ハムバッキングピックアップ」です。
その名の通りハムノイズ(ブーというノイズ)をバッキング(消した)したピックアップで、ハムバッカーとも呼ばれます。
2つのコイルを直列につなぐ事でノイズを打ち消しただけでなく、ファットで独特の音色を手に入れる事になりました。
ではどうやってノイズを打ち消しているのか、説明しますね。
ピックアップの信号はこのように時間に対して波のようになっています。
そして、波をプラスから始めるかマイナスから始めるかを決める「位相」と言うものがあります。信号の「向き」のようなものです。
点線は「位相」を逆にした信号です。
この信号の向きを逆にしてぶつけあうと信号は0になります。この位相の反転を利用してハムバッカーは作られています。
ピックアップにおいて、位相の向きを変える方法が3つあります。
・磁石の向き変える
・コイルの巻きの向きを逆にする
・+-の線を逆にする
です。
ノイズというのは主にコイルが拾ってしまっているものなんですね。なのでコイルの向きを逆に、もしくはプラス・マイナスを逆にすると信号もノイズも0になる。
ですが!
更に磁石の向きを逆にすると!
なんと、ノイズは0になって信号は2倍にする事が出来るではあーりませんか!
逆にして更に逆にする!
これを思いついた時、開発者のセス・ラバーさんはこう言ったのではないでしょうか。
「反対の反対は賛成なのだ」
これは早速パテントとらなきゃいけないのだ。
って事で初期のハムバッカーにはpatent applied for(パテント アプライド フォー)「特許出願中」 というシールが貼ってあり、通称「パフ」と呼ばれているのは有名な話ですね!
ちなみに、厳密に言うと2つのコイルの位置は微妙にズレていて、拾っている信号もノイズも完全に一緒ではありませんので、完全に出力2倍、完全にノイズレスな訳ではないのですが、今までのノイズに比べると圧倒的に少ないのでギター界にとっては超画期的な発明だったのです!
これでいいのだ。byセス・ラバー